第30回キャリアコンサルタント学科試験の日が近づいてきました。学習の総仕上げは順調でしょうか?

学科試験では、最新の法改正や労働経済の動向、そして頻出のキャリア理論に関する正確な知識が合否を分けます。

この記事では、過去の出題傾向と最新の政策動向を分析し、今回の試験で特に出題が予想される「最重要テーマ5選」を厳選して解説します。知識の最終確認にぜひご活用ください。

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1. 労働市場のリアル:「多様な働き方」と法改正(育児・介護、女性活躍)

毎年必ず複数問出題されるのが、白書(労働経済の分析)や各種統計(労働力調査など)に基づく知識です。特に「人手不足」と「多様な働き方」に関連する法改正と統計データは、最優先でチェックしましょう。

育児・介護休業法(産後パパ育休)

男性の育児休業取得促進策は、待ったなしの重要テーマです。最新の「雇用均等基本調査」での取得率の動向はもちろん、制度の具体的な中身が問われます。

  • 「出生時育児休業(産後パパ育休)」:子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能。
  • 分割取得:育児休業が2回まで分割して取得可能になった点。
  • 事業主の義務:個別の周知と意向確認が義務化された点。

これらの要件は、選択肢問題で「できる規定」か「義務規定」かを入れ替えてくる可能性が高いため、正確に暗記しておきましょう。

女性活躍と賃金格差

女性の活躍推進は、2025年現在、深刻化する人手不足への対応という側面からも、国の最重要政策の一つです。試験対策としては、定番の「統計データ」と最新の「法改正」の両面から押さえる必要があります。

  1. 注目すべき統計(グラフ問題) 以下の2点は、最新の統計グラフのイメージと共に、傾向を確実に覚えておきましょう。
  • 労働力率(M字カーブの解消) 女性の年齢階級別労働力率を示す、いわゆるM字型カーブが、近年は解消傾向(出産・育児期も働き続ける女性が増加)にあり、「台形」に近づいているというマクロな傾向。
  • 女性管理職比率 一方で、諸外国と比較して依然として低い、「管理的職業従事者に占める女性の割合」の推移。
  1. 最重要トピック(法改正) 2025年現在、最大のトピックは「男女の賃金格差の情報公表の義務化」です。

これは女性活躍推進法の改正に基づくもので、2024年頃から大企業(常時雇用する労働者301人以上)を皮切りに本格化しています。

この「格差の見える化」の義務付けにより、女性活躍は単なるスローガンではなく、企業のESG経営や人材確保戦略に直結する課題へとステージが変わりました。

試験では、この「情報公表が義務化された」という法的な背景と、依然として根強い課題である「男女間の賃金格差(男性を100とした場合、女性の給与水準は70%台)」という統計上の現実を結びつけた問題が出題される可能性が非常に高いです。

労働移動と副業

「令和5年版」では賃金の伸び悩みが分析されていましたが、その後の白書では人手不足と賃金・生産性の問題が最重要テーマとして扱われています。

「令和6年版」では、国内の人手不足が「長期的かつ粘着的」な課題であると明確に分析されました。この深刻な人手不足を背景に、30年ぶりとも言われる高い水準の春季労使交渉(春闘)の成果など、賃上げの動きが強まっている点が示されています。

そして最新の「令和7年版」では、この「労働力供給制約(=深刻な人手不足)」を前提とした上で、いかに持続的な経済成長を実現するかが焦点となっています。 その鍵として、AIやソフトウェア投資による「労働生産性の向上」の必要性や、人材確保のために企業が人件費を適切に価格転嫁する「労務費の転嫁」といった、より踏み込んだテーマが分析されています。

また、多様な働き方(労働移動)の文脈では、引き続き「副業・兼業」や「テレワーク」といった柔軟な雇用形態の推進が、経済活力を支える重要な要素として位置づけられています。

2. 国策としての「人への投資」(リスキリング、セルフ・キャリアドック)

政府は「人への投資」を重要政策に掲げています。そのため、「第11次職業能力開発基本計画」や「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」といった政府の報告書からの出題が非常に多くなっています。

リカレント教育とリスキリング

政府による「人への投資」政策が本格化し、2025年現在、リスキリングは単なる流行語ではなく、企業の「生産性向上」や「賃上げ」実現のための具体的な戦略として定着しています。

労働者が自律的・主体的に学び直すことの重要性は変わらず、キャリアコンサルタントには、個人の学びの計画支援だけでなく、企業内での制度設計に関わる役割も強く期待されています。

特に、管理職(現場リーダー)と連携し、学んだスキルをどう実務に活かすか、どう評価・処遇に反映させるか、といった「学びが報われる仕組みづくり」を支援する、といった実務的な視点が問われる可能性が高いでしょう。

セルフ・キャリアドック

セルフ・キャリアドックは「労働者の定期的なキャリアの振り返り支援」という基本は変わりません。テレワークの普及やジョブ型雇用の広がりを受け、個々人の「キャリア自律」を促すための重要なツールとして、その意義は一層高まっています。

最近では、若手の早期離職防止のための定着支援や、中高年層(シニア層)の役職定年後を見据えたキャリア移行支援など、具体的な課題解決のために導入されるケースも増えています。

試験対策としては、以下の実務上の注意点を改めて確認してください。

  • 組織への報告:セルフ・キャリアドックを通じて把握した「組織的・全体的な課題の傾向」(例:特定の部署でモチベーションが低下している等)は、個人の秘密を守った上で、原則として企業(人事など)への報告対象となります。
  • 倫理(守秘義務との関係):もしキャリアコンサルタントが面談で法令違反やハラスメントの事実を把握した場合、どう動くべきか。これは倫理規定の最重要ポイントです。必ず「相談者の同意を得て」企業側(適切な窓口)へ伝える、という手順を押さえてください。

ジョブ・カード

ジョブ・カードは、「生涯を通じたキャリア・プランニング」のツールであり、同時に個人の「職業能力証明」のツールとしても活用されます。キャリアアップや円滑な就職を促進するための重要な資料です。

試験対策として特に重要なのが、教育訓練給付制度との連携です。 専門実践教育訓練や特定一般教育訓練の給付金を受けるための要件として、受講前にジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングが必要となる、という点は実務知識として頻出です。

では、キャリコンの役割は何か? ジョブ・カードは「キャリア・プランシート」や「職務経歴シート」、「職業能力証明シート」などで構成されていますが、私たちの仕事は単にその項目を埋める手伝いをすることではありません。 作成を支援するプロセスを通じて、相談者の気づきを促し、面談で話し合った内容を整理・集約(面談のまとめ)することが本質的な役割です。

最後に、試験で狙われやすい「留意点」を2つ押さえましょう。

  1. ジョブ・カードは「キャリアコンサルタントが職業能力を証明する(記載する)ツール」ではなく、あくまで本人が主体となって作成し、活用するものです。
  2. これを応募書類として企業に提出するかどうかは、本人の意思によります。

この「主権はあくまで本人にある」という点をしっかり区別しておきましょう。

3. キャリア理論の鉄板(スーパー、クランボルツ、転機)

キャリア理論は、まさに学科試験の核となる分野です。単なる暗記ではなく、各理論の「定義」や「具体的な概念」を正確に理解し、時には他の理論と比較しながら説明できるかが問われます。

スーパー(Super, D. E.)の理論

スーパーの理論は、キャリアを「点」ではなく「線(生涯)」で捉える視点が特徴です。

  • キャリアの定義:スーパーは、キャリアを単なる職業としてではなく、個人が経験する多様な役割(ライフ・ロール)の組み合わせ(有名なライフ・キャリア・レインボーですね)として捉えました。その上で、仕事と人生を統合する「統合的人生設計」の重要性を説いています。
  • ライフ・ステージ(5段階):この生涯にわたる発達段階(マキシ・サイクル)は、「成長期、探索期、確立期、維持期、解放期」の5段階で構成されます。
  • 狙われやすい「維持段階」:特に中年期にあたる「維持段階」(45~65歳頃)の課題は頻出です。「獲得した地位や利益を保持すること」や「自らの限界を受容すること」といった内容を押さえましょう。
  • 関連キーワード:あわせて、発達課題に対処するための準備度(レディネス)を示す「キャリア・アダプタビリティ」という概念や、「個人は多様な可能性を持っており、さまざまな職業に向かうことができる」と考えた点もスーパー理論の重要ポイントです。

クランボルツ(Krumboltz, J. D.)の理論

クランボルツといえば「計画的偶発性」が有名ですが、その前提となる考え方が重要です。

  • 職業選択=学習の結果:彼の理論では、職業選択は「学習の結果」であると捉えます。
  • 偶然の出来事の活用:キャリアは「偶然の出来事」に大きく影響されるため、その偶然を積極的に取り込み、好機として活かすことが重視されます(これが計画的偶発性理論の核です)。
  • 推奨される行動:では、どうやって偶然を活かすのか? そのために「探索的な行動をとること」を学ぶよう推奨しています。

転機理論(トランジション)

変化の激しい現代において、「転機」の支援はキャリコンの主要な役割です。試験では、特にシュロスバーグとブリッジズの違いが問われます。

  • シュロスバーグ(Schlossberg, N. K.):シュロスバーグは、転機を乗り越えるための「資源」に着目しました。
    • 転機には「予測していた転機」と「予測していなかった転機」があるとしています。
    • 乗り越えるために吟味すべき資源が、あの「4S」です。Situation(状況)、Self(自己)、Support(支援)、Strategies(戦略)の4つは、必ず原語とセットで覚えてください。
  • ブリッジズ (Bridges, W.):ブリッジズは、転機における「内面的な心理プロセス」に着目しました。
    • このプロセスは「終焉(何かの終わり)」→「中立圏(ニュートラル・ゾーン)」→「開始(新しい始まり)」という3つの段階で捉えられます。
    • 最大のポイントは、すべてのトランジションは「終焉」から始まるという点です。新しいものを手に入れる前に、まず古いものから心理的に離れる必要がある、という視点を確実に押さえましょう。

4. メンタルヘルスと両立支援、障害者雇用

キャリアコンサルタントの倫理と実務に直結する分野であり、ガイドラインや最新の認定基準に関する知識が問われます。

治療と仕事の両立支援

「治療と仕事の両立支援ガイドライン」からは、支援の「原則」が問われます。

  • 支援は労働者本人からの申し出が基本です。
  • 疾病に関する情報は機微な個人情報であり、本人の同意なく事業者が取得してはいけません。
  • 支援情報は、同僚が共有することが前提ではありません。
  • 「仕事が繁忙だから」といった理由で、就業上の配慮が例外的に免除されることはありません。

精神障害の労災認定基準(2023年改正)

これは最重要の時事トピックです。2023年9月に「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」が改正されました。

最大のポイントは、心理的負荷(ストレス)の「具体的出来事」として、カスタマーハラスメント(カスハラ)や、感染症等の危険性が高い業務に従事したことが明記された点です。

障害者雇用と合理的配慮

発達障害のある人への支援では、画一的な対応ではなく、個々の能力や特性に合わせた職務の創出(ジョブ・クリエイション)や、本人の意思を尊重した情報共有が重要です。

「合理的配慮」の不適切事例として、「障害者と健常者が同じ環境で働けるよう、机の大きさや高さを他の従業員と画一的に揃える」といった選択肢が出題されたことがあります。合理的配慮とは、画一的な対応ではなく、個別の調整であることを理解しておきましょう。

5. 実践と倫理(システマティック・アプローチと守秘義務)

最後に、キャリアコンサルティングの実践プロセスと職業倫理です。ここは得点源にしたい分野です。

相談プロセス(システマティック・アプローチ)

相談プロセス(システマティック・アプローチ)

ここはキャリアコンサルティングの「地図」であり、面談の基本的な進め方を示す、非常に重要な得点源です。

システマティック・アプローチとは、相談を場当たり的ではなく、体系的(システマティック)に進めるための枠組みです。試験では、各ステップの「順序」と「目的」が問われます。

ご提示いただいた「B→D→A→C」という順序(※)で、各ステップで「何をすべきか」を見ていきましょう。 (※テキストにより英語の頭文字の割り当てが異なる場合がありますが、試験では「関係構築→問題把握→目標設定→方策実行」という日本語の順序が最重要です)

  1. 関係構築 (B: Building Relationship)
    • 目的: すべての土台です。相談者が安心して本音を話せるよう、信頼関係(ラポール)を築く段階です。
    • ポイント: 傾聴や共感的な態度が中心となります。この信頼関係がなければ、次の「問題把握」で核心に触れることはできません。
  2. 問題把握 (D: Diagnosis/Defining the Problem)
    • 目的: 相談者が「何を問題と感じているのか」「本当に解決すべき課題は何か」を明確にする段階です。
    • ポイント: 相談者が訴える「主訴」(例:「転職したい」)の背景にある、本当の課題(例:「現職での評価に納得がいかない」)を、キャリコン視点で見立てます。関係構築(B)が不十分だと、この把握が浅くなります。
  3. 目標設定 (A: Aim/Action Goal Setting)
    • 目的: 把握した問題(D)に基づき、「どうなりたいか」「何を目指すか」というゴールを具体的に設定する段階です。
    • ポイント: ここで登場するのが、後述する「SMART」の原則です。目標はキャリコンが押し付けるのではなく、相談者と共有・合意して設定することが重要です。
  4. 方策実行 (C: Conclusion/Course of Action)
    • 目的: 設定した目標(A)を達成するための、具体的な行動計画(アクションプラン)を立て、その実行を支援する段階です。
    • ポイント: 「何を、いつまでに、どう実行するか」を決めます。実行後も、必要に応じて進捗を確認し、目標の再設定(A)や問題の再把握(D)に戻ることもあります。

この「B→D→A→C」の順序は鉄則です。試験では「問題把握(D)の前に目標設定(A)を行う」といった、順序を入れ替えた不適切な選択肢が出題されます。

目標設定の「SMART」の原則

上記のステップ3「目標設定(A)」を、単なる「頑張る」といった精神論で終わらせないための具体的な技法が「SMART」です。これも頻出です。

良い目標はこの5つの要素を満たしているとされます。

  • S (Specific) = 具体的、明確か
    • (NG例)「スキルアップする」
    • (OK例)「簿記2級の資格を取得する」
  • M (Measurable) = 測定可能か
    • (NG例)「たくさん応募する」
    • (OK例)「今週中に、興味のある企業を10社リストアップし、うち3社に応募書類を送る」
  • A (Achievable) = 達成可能か
    • (NG例)「1週間後にTOEICで900点を取る(現在400点の場合)」
    • (OK例)「次の試験日(3ヶ月後)までに、TOEICスコアを100点上げる」
  • R (Realistic / Relevant) = 現실的・関連性があるか
    • (NG例)「プログラマーを目指す(本人は接客業を強く希望している場合)」
    • (OK例)「接客業の経験を活かせる、営業サポート職の求人を探す」
    • ※Realistic(現実的)とRelevant(関連性)(本人の価値観や課題に関連しているか)の両方の意味で使われます。
  • T (Time-bound) = 期限付きか
    • (NG例)「いつか転職する」
    • (OK例)「次の賞与(12月)をもらった後、1月末までに転職活動を開始する」

■ SMARTの「意義」(なぜ重要か) なぜ、わざわざSMARTな目標を設定するのでしょうか? それは、ご提示いただいた通り「クライエントとキャリアコンサルタントが、進捗を客観的に確認できる」ようにするためです。

目標が曖昧(「頑張る」)だと、面談が「ただ話を聞いてもらうだけ」で終わりがちです。SMARTにすることで、「今、目標の何合目まで来たか」「計画通りに進んでいるか」を客観的に振り返ることができ、相談者のモチベーション維持や、次の一歩の支援につながるのです。

倫理(多重関係と守秘義務)

  • 多重関係:「職場の上司と部下」のように、専門家としての関係性以外(例:利害関係)が重なる状況を指し、中立性・客観性を損なうため避けなければなりません。
  • 守秘義務:キャリアコンサルタントの信用失墜行為や守秘義務違反は、資格の罰則規定の中でも重いもの(罰金刑)が定められています。

リファーとコンサルテーション

この2つの違いは明確に区別してください。

  • リファー(紹介):自分の専門外の支援が必要な時、クライエントを別の専門家(例:医師、弁護士)に「紹介」すること。
  • コンサルテーション(助言):支援の参考にするため、キャリアコンサルタント自身が別の専門家に「相談」すること。

📝 まとめ

以上、第30回試験で特に出題が予想される5つのテーマを解説しました。

  1. 労働統計と法改正(育児休業、女性活躍)
  2. 人への投資(リスキリング、セルフ・キャリアドック)
  3. 頻出キャリア理論(スーパー、転機)
  4. メンタル・両立支援・障害者雇用(特に2023年労災基準改正)
  5. 実践と倫理(プロセス、多重関係、リファー)

試験直前は、新しいことに手を出すよりも、こうした「頻出かつ重要なテーマ」の知識を確実に定着させることが合格への近道です。

体調管理に気をつけて、最後の追い込みを頑張ってください。合格を心より応援しています!

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