【学科試験対策】動機付けグループのまとめ
2025.08.07投稿
動機付けグループの理論比較
モチベーション理論を徹底比較
心理学者が解き明かす「やる気」のメカニズム
欲求段階説
アブラハム・マズロー
人間の欲求は「生理的」「安全」「社会的」「承認」「自己実現」の5段階のピラミッド構造になっており、低次の欲求が満たされると、より高次の欲求が動機となる、という理論です。
達成動機説 (欲求理論)
デイビッド・マクレランド
人の動機は「達成欲求」「権力欲求」「親和欲求」の3つから成り、これらの欲求の強さは生まれつきではなく、経験から学習されると考えます。人によってどの欲求が強いかが異なります。
達成: 困難な目標を成し遂げたい
権力: 他者に影響を与えたい
親和: 良好な人間関係を築きたい
ERG理論
クレイトン・アルダファー
マズローの理論を発展させ、欲求を「生存(Existence)」「関係(Relatedness)」「成長(Growth)」の3つに集約。複数の欲求が同時に人を動機付け、高次欲求が満たされないと低次欲求へ後戻りする(挫折後退)と考えます。
生存 ⇔ 関係 ⇔ 成長
(欲求は柔軟に行き来する)
二要因理論
フレデリック・ハーズバーグ
仕事における満足と不満足は、別々の要因によって引き起こされるという理論。「不満足」に関わるのは給与や労働条件などの「衛生要因」で、これらは満たされても満足には繋がらない。「満足」を生むのは、達成感や承認などの「動機付け要因」です。
動機付け要因: 満足感UP (例: 達成、承認)
衛生要因: 不満足を解消 (例: 給与、人間関係)
自己決定理論
エドワード・L・デシ
報酬などの外的要因よりも、内から湧き出る「内発的動機付け」が重要だと説きます。「自律性(自分で決めたい)」「有能感(うまくやりたい)」「関係性(人と繋がりたい)」の3つの心理的欲求が満たされると、人は自発的に行動します。
自律性: 自己選択の感覚
有能感: 能力を発揮できる感覚
関係性: 他者との繋がり
組織社会化論
ジョン・バンマーネン
直接的な動機付け理論ではありませんが、新人が組織の一員になる過程(社会化)が、その後の仕事への態度や意欲に大きく影響すると考えます。組織文化への適応や役割の学習が、長期的なモチベーションの基盤となります。
組織への適応プロセスが、個人のコミットメントや満足度を形成し、間接的にモチベーションへ影響を与えます。
各理論の比較まとめ
理論家 | 理論名 | 主要な概念 | 焦点 | 動機付けの源泉 |
---|---|---|---|---|
マズロー | 欲求段階説 | 5段階の欲求階層 | 人間の普遍的な内的欲求 | 満たされていない次の階層の欲求 |
マクレランド | 達成動機説 | 達成・権力・親和の3欲求 | 後天的に学習される欲求 | 個人の性格や経験に基づく支配的欲求 |
アルダファー | ERG理論 | 存在・関係・成長の3欲求 | 欲求間の柔軟な関係性 | 複数の欲求が同時、または状況に応じて変化 |
ハーズバーグ | 二要因理論 | 動機付け要因と衛生要因 | 職務環境と職務内容 | 仕事そのものから得られる満足感 |
デシ | 自己決定理論 | 自律性・有能感・関係性 | 内発的動機付けの重要性 | 生来的な心理的欲求の充足 |
バンマーネン | 組織社会化論 | 組織への適応プロセス | 組織文化と個人の役割形成 | 組織への統合と役割の明確化(間接的) |
コラム
人間性心理学とマズロー、ロジャーズ、パールズ
マズローが創りあげた人間性心理学は心理学の第3学派ともいわれ、臨床心理学において行動主義心理学、精神分析学に続く3つ目の立場として位置づけられています。そして、個人の主観的経験と、自己の能力を最大限に発揮しようとする生来の傾向を重視することを特徴としています。
学科試験においてマズローとセットになるのは通常はアルダファ、ハーズバーグのような動機付けのグループですが、人間性心理学を切り口にすると違うメンバーと一緒になることを覚えておくと良いかもしれません。
人間性心理学は、1960年代の戦争や反戦運動を通して、人間性回復運動と呼ばれる人間らしさを尊重する動きが起こりました。 その中で、行動主義の「報酬と罰」という考え方があまりにも動物的ではないかという批判から生まれたものです。ただ、同じ人間性心理学といってもアプローチは違ってきます。
アブラハム・マズロー
この分野のパイオニアです。彼の提唱した「欲求段階説」は、生理的欲求から始まり、安全、所属と愛情、承認を経て、最終的に自己実現という高次の欲求に至る人間の成長プロセスを体系的に示しました。マズローは、自己実現を達成した人々(自己実現者)の研究を通して、彼らが持つ共通の特性を明らかにし、人間の可能性に対する深い洞察を提供しました。
カール・ロジャーズ
人間性心理学を代表するもう一人の重要人物です。彼は来談者中心療法を開発し、カウンセリングにおけるセラピストの態度がクライエントの成長に不可欠であると説きました。ロジャーズが重視したのは、無条件の肯定的配慮(受容)、共感的理解、そして自己一致(純粋性)です。これらの要素が、クライエントが自己を探求し、成長するための安全な空間を提供すると考えました。
フリッツ・パールズ
人間性心理学の流れを汲むゲシュタルト療法の創始者です。彼は「今、ここ」の体験に焦点を当て、未完了のゲシュタルト(未解決の事柄)が個人に与える影響を重視しました。パールズは、クライエントが自身の感情や行動を「今、ここ」でどのように経験しているかに気づくことを促し、統合された自己の回復を目指しました。
これら三者の貢献は、人間性心理学が個人の内なる強さと成長の可能性を信頼し、その実現を支援する強力なアプローチであることを示しています。彼らの思想は、心理療法だけでなく、教育や組織開発など、様々な分野に多大な影響を与え続けています。
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