【ロープレ試験】キャリアコンサルティングの質を劇的に変える「うながし」の技術
2025.08.05投稿
「ああ、また質問ばかりしてしまった…」から卒業しませんか?
キャリアコンサルティングの質を劇的に変える「うながし」の技術
キャリアコンサルタントとして、特に実技試験のロープレで「つい質問ばかりしてしまう…」と自己嫌悪に陥った経験はありませんか?
実はこれは、多くの受験者が抱える共通の悩みです。しかし、この「質問攻め」の癖こそが、合否を分ける非常に大きな壁となります。
なぜ「質問攻め」が評価を下げてしまうのでしょうか? どうすれば相談者の心に寄り添い、自発的な語りを引き出す「うながし」ができるようになるのでしょうか?
この記事では、その壁を乗り越えるための具体的な考え方と、明日からすぐに実践できるトレーニング方法を、一緒に見ていきましょう。
1. なぜ「質問攻め」はNGなのか?評価を下げてしまう本当の理由
面談で質問を重ねてしまうことは、単に会話がギクシャクするだけでなく、試験の評価項目で、あなたの評価を下げてしまう危険性をはらんでいます。
■基本的態度・関係構築力:相談者が心を閉ざしてしまう
矢継ぎ早の質問は、まるで尋問のようです。相談者は「ちゃんと聴いてもらえていない」「自分のペースで話せない」と感じ、心を閉ざしてしまいます。試験官は、相談者が「質問に答えるだけ」の受け身な状態になっているのを見て、「ラポールが築けていない」と厳しく評価するでしょう。用意してきた質問リストを順番に投げかけるような機械的な関わりは、「目の前の相手」ではなく「自分のロープレ」に必死なだけ、と見なされても仕方ありません。
■問題把握力:問題の「根っこ」にたどり着けない
「何があったのか?」という事実確認の質問ばかりでは、相談者の気持ちや価値観といった「心の奥底にある想い」に触れることができません。その結果、「自己理解不足ですね」といった表面的な見立てに終始してしまい、相談者が本当に話したい核心(主訴)や、その背景にある物事の捉え方の癖(認知の歪み)といった、問題の「根っこ」を見逃してしまいます。
■具体的展開力:面談が「堂々巡り」で終わってしまう
問題の捉え方が浅いままでは、その後の目標設定もピントがずれたものになります。想いを受け止めてもらえない相談者は、同じことを何度も繰り返すばかり。結局、限られた時間の中で何の進展もないまま面談が終了し、「具体的展開力不足」と判断されてしまうのです。
2. 「質問」ではなく「うながし」へ。その決定的な違いとは?
「うながし」とは、相談者が自らの力で考え、感じ、言葉にすることを「そっと後押しする」関わり方です。
- 質問:コンサルタントが知りたい情報を得る行為。(矢印が自分に向いている)
- うながし:相談者が語りたいことを引き出す支援。(矢印が相手に向いている)
この「矢印の向き」こそが、両者の決定的な違いです。
「うながし」がなぜ重要か? それは、相談者に「この人は私のことを分かってくれる」という絶対的な安心感を与えるからです。ご存知の通り、コミュニケーションは言葉そのもの(言語情報)よりも、声のトーンや表情(非言語情報)が圧倒的に重要です。穏やかな表情、優しい相づち、相手に体を向ける姿勢。これら全てが「あなたの話を真剣に聴いていますよ」というメッセージとなり、相談者が安心して本音を語れる「安全な場」を作り出すのです。
3. 「質問」から「促し」へ。意識とスキルを変える3つのステップ
癖を直すには、まず意識を変え、具体的なスキルを学び、そして反復することが不可欠です。
ステップ1:マインドセットを変える
- 「答えは相談者の中にある」と信じる: あなたは答えを教える「先生」ではありません。相談者自身が答えを見つける旅の「伴走者」です。自分の知識や経験を押し付けず、相手の力を信じましょう。
- 「完璧なロープレ」という我を捨てる: 上手くやろうと気負うほど、視野は狭くなります。目の前の相談者の言葉や感情に、ただただ集中し、柔軟に反応すること。それだけでOKです。
- 「無心」で聴く: 相手が話している最中に「次に何を聞こう…」と考えるのはやめましょう。思考を止め、五感をフル活用して、相手の言葉、表情、声のトーン、沈黙…その全てを全身で受け止める。これが本当の「傾聴」です。
ステップ2:「間」と「沈黙」を味方につける
応答に詰まったら、焦って言葉を継ぐのではなく、意識的に1〜2秒の「間」を取ってみてください。この「間」が、相談者に「もっと話していいんだ」というメッセージを伝え、内省を促します。
そして、沈黙は金なり。 相談者が黙っている時間は、頭の中で必死に考えを巡らせているサインです。焦って質問を投げ込まず、どっしりと「待つ勇気」を持ちましょう。「沈黙」という名の、最高の「うながし」なのです。
ステップ3:効果的な「促し」のスキルを使いこなす
質問以外の武器を、もっと増やしましょう。
- 伝え返し・感情の反映: 相談者の言葉を、あなたの言葉で言い換えて返します。「〜ということなのですね」「〜と感じていらっしゃるのですね」と返すことで、相談者は「ああ、この人は分かってくれている」と深く安心します。
- 例:「もう限界なんです」→「心身ともにお疲れで、もうこれ以上は難しいと感じていらっしゃるのですね」
- キーワードの反復: 相手の言葉の中で、特に感情がこもったキーワードを、オウム返しのように繰り返します。
- 例:「あの時、本当に悔しかったんです」→「…悔しかった…のですね」
- これだけで、相手は「そう、悔しかったんです!実は…」と、さらに深い話を続けてくれることがあります。
- 視点を変えるオープンクエスチョン: 堂々巡りを抜け出すために、時間軸や視点を変える質問を投げかけます。
- 例:「もし、〇〇さんが心から尊敬している△△さんなら、今の状況をどう見ると思いますか?」
- 例:「少し未来の、この問題を乗り越えたご自身を想像してみてください。その自分は、今の〇〇さんにどんな言葉をかけてくれそうですか?」
4. 明日からできる!「うながし」体質になるための実践トレーニング
頭で分かっていても、実践できなければ意味がありません。体に染み込ませるための、具体的な練習法です。
- 逐語録で自分の癖を「見える化」する: ロープレを録音し、一言一句書き起こしましょう。自分の「質問攻め」のパターンや、無意識の相づち、沈黙に耐えられずに発した言葉などが客観的に見え、「次はこうしよう」という具体的な課題が明確になります。
- シャドーロープレで「口を慣らす」: 上手な人のロープレ逐語などを使い、毎日10分、一人二役でブツブツと音読します。適切な応答の瞬発力が鍛えられ、本番でもスラスラ言葉が出てくるようになります。
- AIを最高の練習相手にする: 「転職を迷う30代女性」など、ChatGPTのようなAIに相談者役を頼めば、24時間いつでもロープレ練習が可能です。終わった後に「今のロープレの評価と改善点を教えて」と頼めば、客観的なフィードバックまでもらえます。あなたのスマホが、最高の練習パートナーになるのです。
おわりに
「質問攻め」は、決してあなただけの悩みではありません。多くの人が通る道であり、意識と練習で必ず乗り越えられる壁です。
キャリアコンサルタントの本当の役割は、答えを教えることではありません。相談者の心に寄り添い、その人自身が内なる力に気づき、自分らしい一歩を踏み出すのを「うながす」こと。
今回ご紹介した方法を、ぜひ日々の練習に取り入れてみてください。あなたの関わり方が変われば、相談者の反応も劇的に変わるはずです。試験合格の、その先へ。あなたが、相談者の人生に光を灯す存在となることを、心から願っています。
<運営会社>
