人間性心理学とマズロー、ロジャーズ、パールズ
マズローが創りあげた人間性心理学は心理学の第3学派ともいわれ、臨床心理学において行動主義心理学、精神分析学に続く3つ目の立場として位置づけられています。そして、個人の主観的経験と、自己の能力を最大限に発揮しようとする生来の傾向を重視することを特徴としています。
学科試験においてマズローとセットになるのは通常はアルダファ、ハーズバーグのような動機付けのグループですが、人間性心理学を切り口にすると違うメンバーと一緒になることを覚えておくと良いかもしれません。
人間性心理学は、1960年代の戦争や反戦運動を通して、人間性回復運動と呼ばれる人間らしさを尊重する動きが起こりました。 その中で、行動主義の「報酬と罰」という考え方があまりにも動物的ではないかという批判から生まれたものです。ただ、同じ人間性心理学といってもアプローチは違ってきます。
アブラハム・マズロー
この分野のパイオニアです。彼の提唱した「欲求段階説」は、生理的欲求から始まり、安全、所属と愛情、承認を経て、最終的に自己実現という高次の欲求に至る人間の成長プロセスを体系的に示しました。マズローは、自己実現を達成した人々(自己実現者)の研究を通して、彼らが持つ共通の特性を明らかにし、人間の可能性に対する深い洞察を提供しました。
カール・ロジャーズ
人間性心理学を代表するもう一人の重要人物です。彼は来談者中心療法を開発し、カウンセリングにおけるセラピストの態度がクライエントの成長に不可欠であると説きました。ロジャーズが重視したのは、無条件の肯定的配慮(受容)、共感的理解、そして自己一致(純粋性)です。これらの要素が、クライエントが自己を探求し、成長するための安全な空間を提供すると考えました。
フリッツ・パールズ
人間性心理学の流れを汲むゲシュタルト療法の創始者です。彼は「今、ここ」の体験に焦点を当て、未完了のゲシュタルト(未解決の事柄)が個人に与える影響を重視しました。パールズは、クライエントが自身の感情や行動を「今、ここ」でどのように経験しているかに気づくことを促し、統合された自己の回復を目指しました。
これら三者の貢献は、人間性心理学が個人の内なる強さと成長の可能性を信頼し、その実現を支援する強力なアプローチであることを示しています。彼らの思想は、心理療法だけでなく、教育や組織開発など、様々な分野に多大な影響を与え続けています。

