初回面談で絶対に外せない5つの質問:短時間で信頼を得て、相談の核を掴むための導入フレームワーク

キャリアコンサルタントとして、私たちが相談者と向き合う時間は限られています。特に初回面談は、その後の支援全体の質を決定づける、極めて重要な60分です。相談者は緊張や不安、期待など、様々な感情を抱えて私たちの前に座ります。この短い時間でいかに信頼関係(ラポール)を築き、相談の本当の核となる部分を掴めるか。それがプロフェッショナルとしての腕の見せ所と言えるでしょう。

そこで今回は、多くの面談経験から体系化された「短時間で信頼を得て、相談の核を掴むための5つの質問フレームワーク」を、より実践的な形にアップデートしてご紹介します。これは単なる質問リストではありません。相談者の心を開き、対話を深めるための戦略的な導入プロセスです。

なぜ「最初の質問」が重要なのか?

初回面談の冒頭は、相談者が「このコンサルタントは信頼できるか」「自分のことを本当に理解しようとしてくれるか」を判断する時間です。ここで的確な問いを投げかけ、真摯に耳を傾ける姿勢を示すことで、相談者は安心して自己開示を始めます。結果として、後の展開でより本質的な課題にスムーズにアプローチできるようになるのです。

では、具体的なフレームワークを見ていきましょう。


信頼関係を築き、相談者のこころをつかむ5つの質問

質問1:「本日はどのようなごお話しでしょうか」

【意図:評価せず、自由に語ってもらうための「入り口」】

この問いかけは、相談者に「何から話しても良いですよ」というメッセージを伝え、自由に語る主導権を渡す「開かれた質問(オープンクエスチョン)」の基本形です。「経緯」を尋ねるよりも、相談者が今一番話したい「困りごと」や「気持ち」から話し始めることを促します。これにより、面談の方向性を定める「来談目的」が明確になりやすくなります。私たちキャリアコンサルタントは「コト(出来事)」の収集だけでなく、相談者の「ココロ(気持ち)」に焦点を当てることが重要です。

質問2:(相談者が事実や状況を語った後に)「その時、どのようなお気持ちでしたか?」

【意図:「事実」と「感情」の分離と受容】

相談者が事実や状況(コト)を語った後、その出来事に伴う「気持ち」や「感情」に焦点を当てて深掘りします。例えば「上司とうまくいかない」という話の後に「その時、どのようなお気持ちでしたか?」と尋ねることで、相談者は自身の感情を客観的に認識し始めます。この問いにより、表面的な問題の裏にある価値観や本当の思いに光が当たります。この「気持ち」や「感情」に寄り添い、共感的に受け止める姿勢は、ラポール(信頼関係)を築く上で不可欠です。

質問3:(問題の全体像や感情が共有された後に)「この課題にこれまで、どのように向き合ってこられましたか?」

【意図:リソースの発見と「協働」関係の構築】

問題の背景や感情が十分に共有されたタイミングで、この質問を投げかけます。相談者の話を十分に聞いた後だからこそ、安心して自身の試みや工夫を語ることができます。この問いは、相談者自身の強みや解決能力(リソース)を再発見させ、私たちコンサルタントが一方的に解決策を示すのではなく、共に問題に取り組む**「協働」**の姿勢を築くための効果的な橋渡しとなります。相談者の自発的な解決を信じ、その力を引き出す関わりが求められます。

質問4:「今日の面談を通して、どのような状態になることを望んでいますか?」

【意図:ゴールの共有と「当事者意識」の醸成】

「この面談が終わった時」と限定するのではなく、「今日という時間を通して」と表現することで、面談内での短期的なゴールと、その先にある相談者の長期的な**「ありたい姿」**の両方を見据えることができます。この質問により、相談者は「話を聞いてもらう」という受け身の姿勢から、この時間を「有意義なものにしよう」という当事者意識へ自然と切り替わります。相談者が本当に解決を望んでいる「主訴」を特定し、面談のゴールを共有することで、対話の方向性が明確になります。

質問5:(話の中で強みが見えた時に)「これまでのご経験の中で、特にご自身の強みが発揮されたと感じることはありますか?」

【意図:視点の転換(リフレーミング)と自己肯定感の向上】

相談者の話の流れや感情を尊重し、その文脈の中で自然に視点を転換させることが重要です。唐突にポジティブな質問をするのではなく、話の中に現れた強みや価値観のヒントを捉え、この問いを投げかけます。「強み」や「成功体験」と結びつけることで、相談者は自らのリソースを再発見し、自己効力感を高めることができます。行き詰まった時には、前向きな気持ちで面談を終えるための**「魔法の質問」**となり得るでしょう。


まとめ

修正された5つの質問は、より相談者の内面に寄り添い、主体性を引き出すための工夫が凝らされています。

  1. どのようなご相談か(オープンな入り口)
  2. どのようなお気持ちか(感情の受容)
  3. どう向き合ってきたか(リソースの発見)
  4. 今日のゴールは何か(当事者意識の醸成)
  5. 強みが発揮された経験は何か(自己肯定感の向上)

このフレームワークが、皆さんの初回面談をより豊かで効果的なものにするための一助となれば幸いです。相談者の未来を共に創るパートナーとして、最高のスタートを切りましょう。

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