◇令和4年版と令和5年版の「労働経済の分析」を読む

「労働経済の分析」の概要はポイントと概要で構成されています。下記リンクよりダウンロードできます。以下にポイントを抜き出し出題されやすいと考えるポイントを太字化していますのでご参照ください。

なお、令和5年版は第25回キャリコン試験では出題されませんでしたので、出題されるのは第26回キャリコン試験以降となります。そうなると令和4年版は出題されないのかな?という見方もありますが、ズバリ、キャリアコンサルティングに関する調査が入っていますので、今後しばらくは出題されるのではないかと考えています。

「労働経済の分析の概要」<ポイント>

「労働経済の分析の概要」<概要>

  • 転職希望者について、正社員や中堅の役職者では転職活動への移行や転職の実現がしにくい傾向がある。一方、転職希望者について、自己啓発を行っている場合や、キャリアの見通しができている場合は転職活動への移行がしやすく、特に正社員や中堅の役職者でキャリアの見通しができていると転職の実現がしやすい傾向がある。
  • キャリアチェンジ(職種間移動)をする場合、能力活用、仕事内容への満足、賃金が高いといった積極的な理由の場合に転職後の満足度は高くなりやすい。キャリアの見通しや自己啓発が転職後の能力活用や仕事の満足度の向上を通じて賃金の増加にもつながる可能性。
<キャリアコンサルティングや自己啓発の促進>

※キャリアコンサルティングや自己啓発により労働者の主体的なキャリア形成意識を高めることで、転職の有無に関わらず、目的意識を持って日々の業務等に取り組むことにつながり、企業や社会全体の生産性の向上が期待できる。

  • キャリアコンサルティングを受けた者は、キャリア設計において主体性が高い者が多く、幅広い分野でキャリアを形成している傾向。
  • 労働者が自己啓発について抱えている課題は、時間が取れない、費用がかかるといったものが多い。企業が費用面での支援や就業時間の配慮等を行っている場合、自己啓発を行っている社員の割合が高い傾向がある。
<公共職業訓練の効果と課題>
  • 公共職業訓練の受講により再就職しやすくなる効果が認められるとともに、介護・医療・福祉分野の訓練では、他分野からの労働移動を促進する効果がある可能性
  • 介護・福祉分野の訓練では介護・福祉職と類似性が低い職種の経験者も含め、幅広く受講者を募ることが有効である可能性。IT分野の訓練では、女性の受講者は事務職に就職する傾向が強く、情報技術者に就職しにくい傾向があり、女性の情報技術者への就職を更に促進するためには、女性の情報技術者への就職に対する関心を高める必要性。

「労働経済の分析の概要」<ポイント>
「労働経済の分析の概要」<概要>

  • 我が国の雇用情勢は、経済社会活動が徐々に活発化する中で持ち直している。雇用者数については、女性の正規雇用者数が堅調に増加したほか、「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」では減少から増加に転じた
  • 人手不足感はコロナ前の水準まで戻りつつある中、転職者は、「より良い条件の仕事を探すため」が牽引し、3年ぶりに増加に転じた。
  • 名目賃金は全ての月で前年同月を上回り、民間主要企業の賃上げ率は、2.20%と4年ぶりに前年の水準を上回った。一方で、円安の進行等に伴う物価上昇により、実質賃金は減少した。
    ※ 実質賃金:前年比▲1.0%(2021年 +0.6%、2020年 ▲1.2%)
  • 賃金は、1970年から1990年代前半まではほぼ一貫して増加していたが、1990年代後半以降、それまでの増加トレンドから転換し、減少又は横ばいで推移している。
  • 1990年代後半以降、物価の影響も考慮すると、一人当たりの実質労働生産性は他の主要先進国並みに上昇しているものの、実質賃金は伸び悩んでいる。我が国においては、労働時間の減少や労働分配率の低下等が賃金を押し下げている。
  • 我が国の賃金の伸び悩みには、企業の利益処分、労使間の交渉力、雇用者の構成等の変化や、日本型雇用慣行の変容、労働者のニーズの多様化が寄与した可能性がある。
  • 賃上げは、企業にとっては、求人の被紹介確率を上昇させるとともに離職率を低下させる等の効果が労働者にとっては、仕事の満足度を高める等の効果がある。
  • 賃上げは、経済全体でみると、消費や生産等を増加させる効果がある。また、賃上げや雇用の安定は希望する人の結婚を後押しする観点からも重要。

※ 全労働者の賃金が1%増加した場合に見込まれる効果:生産額 約2.2兆円、雇用者報酬 約0.5兆円

売上総額や営業利益等が増加した企業や、今後増加すると見込む企業ほど、賃上げを行う傾向がある。

価格転嫁ができている企業ほど賃上げする傾向がある。価格転嫁できない理由は、「価格を引き上げると販売量が減少する可能性がある」が最多。 

<スタートアップ企業等の新規開業と賃金の関係>
  • OECD諸国についてみると、開業率と労働生産性・賃金上昇には正の相関がみられる。
  • スタートアップ企業等における賃上げ率や、成長見通しは、創業15年以上の企業よりも高く、賃上げにも積極的な傾向がある。

※ スタートアップ企業は、通常創業10年以内の非上場企業とされるが、データの制約から15年未満の企業について分析。 

<転職によるキャリアアップや正規雇用転換と賃金の関係>
  • 転職を経ると2年後に転職前と比べて年収が大きく増加する確率が高まる。
  • また、非正規雇用労働者が正規雇用に転換すると、年収が大きく増加するだけではなく、安定した雇用に移ることで、キャリア見通し、成長実感が改善し、自己啓発を行う者の割合も高まる傾向がある
  • 最低賃金が近年大きく上昇している中で、最低賃金近傍のパートタイム労働者割合は高まっている。最低賃金の引上げは、最低賃金+75円以内のパートタイム労働者の割合を大きく上昇させ、時給が低い(下位10%)パートタイム労働者の賃金を大きく引き上げる可能性がある。
  • 同一労働同一賃金の施行は、正規・非正規雇用労働者の時給差を約10%縮小させ、非正規雇用労働者への賞与支給事業所割合を約5%上昇させた可能性がある。

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