労働法関係はどこが出題されているか?

労働法関係はどこが出題されているか?

キャリアコンサルタント試験の労働法関連問題は、多岐にわたるテーマから繰り返し出題される傾向にあります。単に法律の条文知識を問うだけでなく、労働者の権利擁護、活用可能な制度の理解、職場のハラスメントやメンタルヘルス対策、多様な働き方への対応、そしてキャリア形成支援に関する公的取り組みなど、キャリアコンサルタントとしての実践的な知識が求められます。過去問分析から明らかになった主要な出題テーマと内容を、句構造を意識して分かりやすくまとめます。

1. 労働基準法

労働基準法は、労働者の基本的な権利を保護する法律です。試験では必ず出題されますのでしっかり押さえましょう。

  • 労働時間、休憩、休日、休暇:
    • 様々な労働時間制度(1ヶ月単位の変形労働時間制、裁量労働時間制、フレックスタイム制など)における労働時間の考え方や、それらを導入するための要件が問われます。
    • 所定労働時間を超えて労働させた場合の割増賃金や、法定休日と法定外休日における割増賃金の計算方法に関する理解も重要です。
    • 年次有給休暇の付与要件(雇入れからの期間、出勤率など)も頻出します。
    • 具体的な状況(警備業務や飲食店での待機時間など)が労働時間に該当するか否かの判断も求められます。
  • 賃金:
    • 賃金支払いの5原則(通貨払い、直接払い、全額払い、毎月1回以上、一定期日払い)を正しく理解しているかが問われます。
    • 会社都合で労働者を休業させた場合に支払うべき休業手当の義務や、出来高払制で働く労働者の賃金保障についても出題されます。
  • 労働契約・就業規則:
    • 労働契約における合意の原則と、就業規則との関係性(どちらが優先されるかなど)が問われます。
    • 企業が就業規則を労働者にとって不利益に変更する場合の合理性を判断する要素も重要です。
    • 管理職手当のように、一部の労働者にのみ適用される事項を就業規則へ記載する必要があるか否かも問われます。
  • 解雇: 試用期間中の解雇がどのような場合に制限されるかといった知識が求められます。
  • 適用範囲: 労働基準法がどのような事業所に適用されるかという基本的な内容も問われます。

2. 雇用保険制度

雇用保険制度は、労働者の生活と雇用の安定、能力開発、再就職の促進などを目的とする政府管掌の保険制度です。

  • 制度の目的と二事業: 雇用保険が持つ上記の目的や、雇用安定事業と能力開発事業から成る「雇用保険二事業」の構成が問われます。
  • 各種給付: 育児休業給付が雇用保険から、出産手当金が健康保険から給付されるといった、給付金の種類とそれぞれの給付元を正確に区別できるかが重要です。日雇労働者の雇用保険加入の可否も問われます。
  • 教育訓練給付金: 労働者の主体的な能力開発を支援するこの制度について、支給額、支給要件、申請期間、キャリアコンサルティング費用の加算といった詳細な内容や、ハローワークでの受給資格照会の手続きが問われます。
  • 求職者支援制度: 雇用保険を受給できない求職者を対象とした職業訓練による就職支援制度であり、一定要件を満たした場合の職業訓練受講給付金の支給、ハローワークによる就職支援、訓練の実施機関(国や都道府県)、費用の原則(無料)などが問われます。

3. 社会保険(労災保険、健康保険、厚生年金保険、雇用保険料)

各種社会保険制度における保険料負担や給付内容が問われます。

  • 保険料負担: 労災保険料は事業主が全額負担すること、健康保険料および厚生年金保険料は産前産後休業・育児休業期間中は申請により免除されること、雇用保険料の労働者と事業主の負担割合などが重要です。
  • 労災保険: アルバイトやパートタイマーも労災保険法の適用対象となることや、労災年金給付等の算定基礎となる給付基礎日額が毎年の平均給与額の変動に応じて変更されることが問われます。また、心理的負荷による精神障害の労災認定基準に関する具体的な出来事の追加といった最新情報も出題範囲です。

4. 労働関係法令の所管

様々な労働関連業務(厚生年金保険、男女差別・セクシュアルハラスメント対策、職業相談・職業紹介、職業訓練の受講あっせん、雇用保険の給付、労働組合との紛争解決など)について、それぞれどの国の機関(労働基準監督署、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)、公共職業安定所、都道府県労働委員会)が所管しているかを正しく理解しているかが問われます。

5. 多様な働き方・雇用形態に関する法規

正規雇用以外の働き方や、様々な立場にある労働者を保護するための法律知識が求められます。

  • パートタイム・有期雇用労働法: 短時間労働者や有期雇用労働者が、正社員との待遇差の内容や理由について事業主に説明を求めることができる権利を持つことが問われます。
  • 高年齢者雇用安定法: シルバー人材センターがこの法律に基づいて制度化されていることが問われます。
  • 若者雇用促進法: 新卒募集を行う企業が応募者等に対して情報提供を行う義務や、ハローワークにおける求人受理に関する規定が問われます。
  • 派遣労働者: 派遣労働者の属性、産業別の就業割合、実施される教育訓練の内容、正社員採用制度の有無などが統計情報に基づいて問われます。
  • テレワーク: テレワーク導入時の就業規則変更の必要性、休憩の一斉付与の例外、時間外・休日労働と36協定の関係、ワーケーションとの関連性などが問われます。

6. 人材開発・能力開発関連の制度・統計

労働者のキャリア形成を支援するための制度や、関連する統計調査に関する知識が重要です。

  • 能力開発基本調査: 厚生労働省が実施するこの調査の構成(「企業調査」「事業所調査」「個人調査」)や、調査結果から明らかになる労働者の自己啓発の実施率、内容、キャリアコンサルタントへの相談希望内容などが問われます。
  • 職業能力開発基本計画: IT人材育成、セルフ・キャリアドックの導入推進、中高年への支援策、雇用型訓練の推進といった、計画に盛り込まれた具体的な内容が問われます。
  • 職業能力開発促進法: キャリアコンサルティングや労働者の定義、職業能力開発推進者の選任(義務ではないこと、役割)などが問われます。
  • 助成金制度: 人材開発支援助成金やキャリアアップ助成金の対象者(正規・非正規)、目的(訓練費用助成、正社員転換支援など)が問われます。人材開発支援助成金の一部コースでは職業能力開発推進者の選任が要件となることもあります。
  • セルフ・キャリアドック: 職業生活の節目にキャリアコンサルティングを受ける機会を設定するこの取り組みについて、企業にとっての人材育成や生産性向上への効果、導入時の説明会や集合研修、面談の実施方法などが問われます。
  • ジョブ・カード: 労働者等が自身のキャリアを整理・確認するためのツールであり、キャリアコンサルタント等と共に作成すること、職業能力証明を含むこと、作成支援WEB/ソフトウェアの存在、面談での活用方法、就業経験の少ない人向けのツールとして開発された経緯などが問われます。

7. 労働市場・雇用情勢に関する統計・白書

キャリアコンサルティングを行う上で背景となる、労働市場や雇用に関する最新の動向を理解しているかが問われます。

  • 労働経済の分析: 雇用によらない働き方、育児休業制度と就業継続、働き方改革と人手不足、人手不足対策、多様な働き方、労働移動、企業規模別の傾向など、最新の雇用情勢や政策に関する内容が問われます。
  • 労働力調査: 完全失業者、労働力人口比率、完全失業率、非労働力人口といった統計用語の定義や、雇用形態別の雇用者数、失業者数、転職入職率などの調査結果が問われます。
  • 就労条件総合調査: 週所定労働時間や年次有給休暇取得率などの調査結果が問われます。
  • 賃金構造基本統計調査: 年齢や勤続年数、職種別の賃金相場を知るために用いられる統計であることが問われます。
  • 労働市場のミスマッチ: 産業・地域間、個別の企業と労働者間のミスマッチの種類、景気刺激策や情報開示による緩和策、構造的なミスマッチの例(事務職と介護・福祉職)などが問われます。

8. メンタルヘルス・健康関連法規・指針

労働者の心身の健康を保持増進するための知識や、関連法規・指針の理解が求められます。

  • 職場における心の健康づくり: 「心の健康づくり計画」に基づき推進される、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアのそれぞれの取り組み内容や役割分担が問われます。
  • ストレスチェック制度: 実施者の要件(医師、保健師、研修修了者など)、評価方法・基準の決定者、高ストレス者の選定基準、結果通知の内容、事業者が労働者個別の結果を把握するための同意の要否、人事上の不利益な取扱いの禁止といった詳細な運用ルールが問われます。
  • うつ病: 症状の理解に加え、職場や医療者による適切な対応(早期休息の重要性、重要な決断の時期、症状の波への理解、受診勧奨、関係機関との連携など)が問われます。
  • 治療と仕事の両立支援: 労働者からの申し出を端緒とすること、主治医や産業保健スタッフ、職場上長等との連携の重要性、就業上の措置や治療への配慮のポイントなどが問われます。
  • 睡眠: 適切な睡眠時間と健康リスク、日光浴の効果、睡眠障害の場合の受診の目安、アルコールの影響など、メンタルヘルスと密接に関連する睡眠に関する知識が問われます。
  • 発達障害者支援: 就労支援の前に取り組むべき課題(生活自立、二次障害の予防・対応)、支援ニーズの多様性、個々の特性に応じた就業上の配慮事項などが問われます。

9. 学校におけるキャリア教育関連

児童生徒の発達段階に応じたキャリア教育の推進に関する知識が求められます。

  • 学習指導要領: キャリア教育の基本的な考え方(特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて充実を図ること)、小・中学校および高等学校の各段階におけるキャリア教育・進路指導の具体的な内容、指導におけるガイダンス機能・カウンセリング機能の充実などが問われます。
  • キャリア・パスポート: 児童生徒が小学校から高等学校までのキャリア教育に関わる諸活動を記録・蓄積するポートフォリオであり、自己評価ツールとしての工夫、学習指導要領での活用義務、校種間での引き継ぎの重要性、特別支援学校等での対応、入学者選抜での使用の可能性、面談での活用方法などが問われます。
  • キャリア教育の意義・課題: 職場体験活動のみではキャリア教育として不十分であること、「働く」ことの現実や必要な資質・能力育成への指導の重要性、教育課程全体を通じた体系的な取り組みの必要性などが指摘されている点が問われます。キャリア教育で育成を目指す基礎的・汎用的能力についても理解が求められます。
  • インターンシップ: 大学等における教育内容の改善や学生の学習意欲喚起、学生の自己理解や職業意識育成に繋がる機会としての意義が問われます。高等学校における就業体験(インターンシップ)の推進についても同様です。
  • キャリア教育と生徒指導の関係: 生徒指導とキャリア教育が、児童生徒の社会的自己実現を支える教育活動として相互に作用し合うことを理解し、一体となった取り組みを行うことの重要性や、生徒指導上の課題対応においても自己の生き方や進路目標が重要となる点が問われます。

10. その他労働関連

上記に含まれないものの、労働者の権利や職場環境に関連する重要なテーマが出題されます。

  • 公正な採用選考: 「公正な採用選考の基本」で示された、就職差別に繋がる恐れがあるとして採用選考時に配慮すべき把握項目(家族状況、住宅状況など)や、新規高等学校卒業者の統一応募書類の作成主体とその目的(差別のない公正な採用選考の実現)が問われます。
  • 労働組合: 労働組合の目的(労働条件の維持改善、経済的地位の向上など)、失業者も加入できること、わが国の労働組合の主な形態(企業別組合が多い、企業在籍役員が多い)などが問われます。
  • 組織と人的資源管理: ポジティブ・アクション、ワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティ経営の定義や目的、期待される効果などが問われます。また、性的マイノリティ当事者が職場で抱える困難(目に見えにくさ、地縁・血縁に頼れない孤独感、ジェンダー規範によるプレッシャー、プライベートな会話での緊張、書類上の性別と見た目の不一致から生じる問題など)についても理解が求められます。
  • ウェルビーイング: 就業面からのウェルビーイング向上と、企業の生産性向上は相反するものではなく両立しうるという考え方などが問われます。

これらのテーマに関する知識は、キャリアコンサルタントが相談者に対して的確な情報提供や助言を行うための基盤となります。そのため、法律や制度の丸暗記ではなく、それぞれの背景にある理念や目的を理解し、具体的な相談場面を想定しながら学習することが合格への鍵となるでしょう。統計や白書の内容も、労働市場や労働者の現状を客観的に把握し、適切なキャリアコンサルティングを行う上で不可欠な知識として重視されています。

この記事は夢ロープレ研究室☆試験対策カレッジのカレッジメルマガ21号に掲載したものを転載したものです。カレッジメルマガは「夢ロープレ研究室☆試験対策カレッジ」の登録者に平日に毎日送られるメルマガです。

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