【ロープレひとことアドバイス】相談者が今何を考えているかを追跡する
2024.04.09更新
相談初期でよくやる間違いが、いきなり相談者の状況や問題点を探る質問等の対応を行うことです。ロープレの中で最終的に主訴にたどり着く必要があるのですから、それらは最終的に必要な対応です。でも、相談初期にやることはNG行為になります。
それはなぜでしょうか?
相談初期は、まず相談者に来談目的を話をしてもらうところから始まります。その来談目的を確認し、じゃあ、細かく聞いていこう、としたい気持ちは分かりますが、まだ、相談者の説明は終わっていない可能性が高いのです。
皆さんが、自分自身が悩みを抱えて相談をする場合を考えてください。キャリコンに対し話をするのですから、少なくとも最初の来談目的は事前に考えます。その中に色々な情報を詰め込むと自分でも話をするうちに、何を話しているか分からなくなる懸念がありますので、細かい部分は削ぎ落した要約という形になります。
そして、通常は以下のようなステップでキャリコンに対し既に考えている現状と背景説明を行っていきます。
①来談目的を説明する
②来談目的の要約の際に外した重要なことを話す
③関連するものごとについて説明する
ここまでは事前に考えて頭の中にあることです。そのため、キャリコンは相談者が順々に話をできる環境を作ればよいことになります。
その間キャリコンは何をすればいいでしょうか?
それは相談者が今何を考えているかを追跡することです。
例を挙げて考えてみましょう。会社で人間関係が上手くいかず、会社を辞めるかどうかを悩んでいる相談者の例です。
この相談者は来談目的の説明の後で次の順番で説明しました。
<ケース1>
①自分は職場で阻害されているように感じている。
②自分は会社でこのような扱いを受けている。
③自分は仕事でいろいろな改善を行なっており職場には貢献している自負がある。
④上司に話をしたが、話は聞いてくれるが全く動いてくれない。
⑤以前に勤めていた会社では非常にうまくやれていた。
⑥何でこんなことになったのか分からない。
⑦非常に苦しく勤め続けるのがつらい。
⑧転職して自分が上手くできるような仕事を探した方が良いかと思っている。
⑨ただ、そんな仕事がみつかるだろうか?
次にもし相談者が次の順番で話した場合を考えてみてください。
<ケース2>
①転職して自分が上手くできるような仕事を探した方が良いかと思っている。
②ただ、そんな仕事がみつかるだろうか?
③自分は会社でこのような扱いを受けている。
④自分は仕事でいろいろな改善を行なっており職場には貢献している自負がある。
⑤自分は職場で阻害されているように感じている。
⑥何でこんなことになったのか分からない。
⑦非常に苦しく勤め続けるのがつらい。
⑧上司に話をしたが、話は聞いてくれるが全く動いてくれない。
⑨以前に勤めていた会社では非常にうまくやれていた。
ケース1はまず職場での扱いに対する不満から説明が始まっています。そして自分の正当性を主張した上で職場の人間の理不尽な扱いから自分が苦しみ転職を考えざるを得なかった事情を説明しますが、一方でそんな仕事が見つかるか?について不安を感じています。
それに対しケース2は、まず転職をしようと考えているが、そのような仕事が見つかるだろうかとの不安から始まっています。なぜそのような不安を持つかの説明として、現在の職場で上手くいっていない状況を上げ、なぜうまくいっていないのかを自分が分かっていないことを上げています。
ケース1の相談者の場合は職場で上手くいっていない原因が分かり、問題が解決すれば転職の話はどこかに行ってしまうケースである可能性が高いことが分かります。
ケース2の相談者の場合は、ケース1の相談者より転職の思いが強く、転職は前提になっているように感じられます。職場で上手くいっていない理由は知りたいと思っていますが、それは転職を上手く行うためのものです。
このように相談者がものごとを話す順番は相談者の今の考えを反映しているので、注意深く聴く必要があります。
私が傾聴段階で質問はしない方が良いと説明している理由の一つは、キャリコンの質問で説明の順番が変わってしまうからです。
ケース2の相談者に対しキャリコンが来談目的の説明の後で「なぜ転職を考えているのですか?」と質問したらどうなるでしょう。おそらくはケース1と同じような順番の説明になってしまいます。ここまで読んで頂いた方にはこれが何を示すかがお分かりになると思います。
ロープレ試験の時も同様です。相談者役はロープレのケースの主訴を準備します。そして主訴に導く状況や背景などを準備して試験に臨みます。そして主要なこと以外のものごとは基本的にはキャリコンの出方に合わせてその場で考える対応になります。相談者役はそのような流れで準備をするので相談者役がその場で考えたことは主訴には直結しないことが多いです。
このように目の前の相談者(役)が今何を考えているかを追跡することは非常に重要です。
この記事は2023年12月29日発行のメルマガ60号に開催したものを転載したものです。
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